江戸初期に築かれた潮止め堤防上の新町通り問屋街。この界隈の町並みは、廻船問屋の店舗兼住宅である商家と、その商い蔵が通りを挟んで向かい合う形で形成されてきました。
かつて200以上にも及んだ土蔵群は現在では数えるほどとなり、当時の旺盛を知る上でも貴重な蔵を、倉庫業を営む老舗企業の営業倉庫として再生しました。
向かいの商家は、事務所としての機能と住居の役割を果たしています。町並みが形成された当時と近いかたちで、今日まで日々の営みが続いている例は、新町通りの中でも他に類を見ない貴重なもの。
潮風と西日に晒されながら働き続けた引戸は経年退色し「用の美」が宿る。削り出しのチーク材の引手以外はあえて手を加えず、改修された周囲との間に新旧の対比を明快に表現しました。
塗りつぶされていた窓を復活させ、高潮と地震に備えて構造を補強。白木の構造補強材と黒い古材のコントラストが美しさを生み出しています。
街へと溢れ出る灯は、地域再生への意志の表れでもあります。
玉島新町通り 江戸期築の蔵の再生