1964年の東京五輪の年に建てられた縫製工場を、半世紀の時を経てアトリエ付き住宅へと再生しました。
今回の縫製工場と同様に、児島の街には人々の暮らしを支え、記憶に染み込んだ繊維産業の工場群が数多く点在しています。
時の流れと潮風に洗われ、働きものの風格を備えた愛すべき建物達。それらが放置されたり、面影すらない新築に刷新されていくことが、人々が愛着を寄せる、その街らしい佇まいの醸成にはたどり着けないのではないか。
街の歴史と共にあるこの工場に新たな価値と役割を見出し、創意工夫により魅力的に再生出来れば、この取り組みはこの家の課題解決だけでなく、児島の街の魅力再発見と、地域再生へのひとつのケーススタディーの提示なるのではないかと感じ、この再生設計の不可分の目標としました。
増改築で複雑化し、危険性が高まっていた間取りは減築と耐震補強を施しました。
吹き抜けに設置されていた、東京五輪開催当時の世相を感じる鍛冶屋さんの手仕事のを感じさせる手すりは再利用して活用。リビングダイニングの奥には龍王山を眺めるライブラリーコーナーを配置(展示家具:松本家具研究所)し、2階部分は、既存のキングポストトラスの屋根を表したアトリエ空間として再生しました。
児島 学生服縫製工場の再生