パブリックな諸室からプライベートな諸室へと連なる一連の空間を、床の高さの違いを利用してひとつ屋根の下に合理的に配置。街に開かれながら安心感も得られるコンパクトな新築の事例です。
備前富士(芥子山)の麓、水田が広がる風景の中、棚田のように段々状の床が、大地から空へと連なり、家族の暮らしを穏やかに包み込みます。
立地を考慮した高床式住居とすることで、リビングダイニングは開口部を開け放っても安心感を得られる空間に。また、ほこりや湿気を多く含む地面近くの外気を室内に取り込まず、床下は24時間換気の通り道とすることで良好な住環境を確保しました。
深い庇は、夏の強い日差しや風雨を遮りながら冬は陽だまりをつくります。
東西の袖壁は、水田を吹き抜ける夏の涼風を家に取り込むウインドキャッチャーとしての役割を果たし、冬の季節風や西日の影響を抑え、隣家からの視線を遮りプライバシーも守ります。
深い庇と袖壁に包まれた高床式のオープンテラスでは、ハンモッグでの昼寝を楽しむこともでき、洗濯物や布団も思いっきり広げて干せる環境に。キッチン小窓から給仕することでオープンカフェとしても利用できます。
玄関は、西日や冬の季節風から守るために東側へ回り込むように配置。塀のない敷地にあって格子戸で守られた広い玄関土間はいわば屋根のある前庭。アウトドア用品の手入れや、ご近所との井戸端会議の場として、また安全に自転車などを収納する場所にもなります。上部の高窓からは中庭越しにリビングの気配を感じることもできます。
2階寝室には、プライバシーを守りつつ備前富士と空を眺めることができる高窓を設置。夏季に開放することで暑い空気を追い出し、エアコンに頼らない安眠空間を得ることができます。
雨や日射から家を守る東西の壁は、この地域の民家で古くから取り入れられてきた焼杉板張りに。南北の壁は柔らかな表情の左官仕上げとし、軒裏は屋根の木組みをそのまま表しました。
西側に集約された水回りゾーンは、冬の季節風や夏の西日そしてプライバシーを守るため壁開口を絞り込みつつ、トップライトからの明るい日差しをふんだんに取り入れています。
スキップフロアの家