マンションや駐車場、大型施設のビル群が増え続ける都市環境。そんな立地環境に背を向けることなく、ヒューマンスケールを取り戻す積極的な一歩として、垣根を取り払い、植栽を施し、地域との関わりを深めつつ街に住み続けていくための住宅兼店舗の「まちなかコートハウス」の新築です。
奥様が営むヘアサロンは街に大きく開きつつ、敷地の高低差を利用してスキップフロア状に中庭に沿って螺旋状にまわる動線で、各部屋の外と中との程よい関係を求めました。お城の本丸に登るような空間構成により、街に開きながらも住環境の安心感を得ることができるコンパクトな家となりました。
緑のゲートの先は緩やかなスロープが伸びる玄関アプローチ。屋根とスロープの傾斜によるパース効果で、実際以上の距離感を演出し、正面の小さな前庭に置かれた備前焼の蹲(つくばい)が、訪れる人をやさしく迎えてくれます。
屋根は中庭に向かってすり鉢状に傾斜しています。背の高い外壁で室内を包みつつ、中庭に大きく開くことで、プライバシーを守りながら開放的な暮らしを送ることができます。
4坪の小さな中庭には太陽光が降り注ぎ、その拡散光で室内は日中、照明がいらない明るさに。屋根の傾斜がそのままに表われる室内は、中庭から取り入れた風が高窓から抜ける風の通り道でもあります。
断熱性能は次世代省エネ基準を満たし、壁内・屋根裏通気、床下換気、四寸角柱、地盤改良等を施し、長寿命で健全な住まいが実現しました。