度重なる増改築により、動線が複雑化し老朽化も進んだ旧施設群に対して、1984年築の一棟のみを残した抜本的建替えを実施し、新・旧施設の機能的一体化を実現しました。
目指したのは、歴史と自然豊かな児島・郷内地域固有の周辺環境を活かした「豊かな繋がりと育みのデザイン」による保育環境の再構築です。優れた温熱音環境での情緒豊かな保育実現の為、RC造旧園舎群の建替えを木造にて実施しました。

隣接の古刹と背後にある山、眼下に眺める街との調和と、高低差に富んだ地形活用、既存園舎との一体性、チームワークを支える高い視認性と諸室連携、園児活動範囲の接地階限定化等、多様な諸要素の関係性が豊かに紡がれ育まれるようにと、諸室配置、形、スケール、素材、色彩等を丁寧に組み立てました。

既存園舎の特徴的な屋根デザインを新園舎にも取り入れ、新旧の一体感、シンボル性、玄関のゲート性を高めました。
朝の楽しい登園や夕刻の穏やかな降園の風景を、やさしく暖かな心持ちで演出します。

南側外廊下は、床、壁、天井、建具、骨格の全てを木材とし、雁行しながら伸びた深く低い軒下が、中庭を包み込んで利用者をやさしく迎え入れ、保育園にとって重要な働きを担う施設内外の中間領域を豊かなものとしています。
東側からの外観は、地形に沿うように変化させた建物高さが南・北でのスケール感の差となって現れ、外壁素材の違いと相まって、明快なコントラストを見せています。
また、当地の原風景とも言える、帆布製造などの繊維産業を支えてきたノコギリ屋根工場の姿に図らずも似た北側外観は、高窓からの北側採光、山への眺望、大空間への十分な自然換気を意図した結果導かれたもので、鋼板やRC高基礎により風雨や災害から施設を強固に守っています。

南北両面の大開口により、南側の中庭と北側の山との一体感を高めた遊戯室。ランチルーム活用が可能となる厨房配膳口を西面に設置し、また調理室側の床を一段下げて調理士と園児の目線が近くなるようし、食育貢献にも努めました。

若杉保育園増改築

施設名
社会福祉法人無量会 若杉保育園
所在地
倉敷市曽原
竣工
2021年
延床面積
1101.57㎡
工事面積
692.74㎡
設計
仁科建築設計事務所
施工
中村建設 株式会社
写真
しんめんもく

新旧建物の境目に設けられた正面玄関

保護者が園児を迎えに来る降園の時間。あたたかな光で穏やかに包み込む

舞台には園児たちの身長に配慮した高さに祭壇を配置

北南両面の大開口により内外の一体感を高めた保育室。さわやかな光と風が室内を通り抜ける